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ゆきげしょう

神奈川県横須賀市で開業している司法書士・行政書士事務所しらゆきリーガルフロンティア 所長によるブログです。

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今日、久しぶりに、特定受遺者と第三取得者の関係について考えてみた。


みなさまこんばんは。
司法書士の有本です。

久々の更新となりました。
今日は、午後2時間ほど仕事を抜けて、
行政書士会横須賀支部の民法の研修会に参加して参りました。
研修は、民法の条文にそって進められ、遺言執行に関する個所が主な内容でした。


遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)とは、
遺言者の死後、遺言書の内容を具体的に実現する人をいいます。
遺言書に書かれている内容・趣旨にそって、相続人の代理人として
相続財産の引き渡しや名義変更などの各種の手続を行います。
そんなの相続人がやればいいじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、
遺言で、財産をもらると指定された相続人以外の相続人はおもしろくないでしょうし、
認知や廃除(相続権のはく奪)の審判の申し立てなどは、
そもそも協力を得ることも難しいでしょう。
そこで、こうした感情の対立を回避するために、
相続人に代わって手続きをしてくれる役職が必要となるのです。


遺言執行者に関し、次の条文があります。


(民法1013条)
遺言執行者がある場合には、相続人は、
相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。



上記は、ある人が遺言をし、その遺言に執行者が指定されていた場合、
法定相続人はその執行者の職務をじゃましてはいけません、
邪魔して勝手に財産を処分しても無効ですよ、という条文です。


これについて、研修会で物議をかもしたので、
わたしの思ったことを書こうと思います。


ドラえもん一家を例に取ってみましょう。

家族構成  父 野比のび助
       母 野比玉子
       子 野比のび太


父のび助の法定相続人は、妻である玉子と、子ののび太ですが、
実はのび助は、玉子とのび太が自分につらくあたるのを恨み、
「自分が死んだらマイホームの所有権をすべてドラえもんに相続させる」
という遺言を書き残していました。

ドラえもんは、のび助の法定相続人ではありませんから、
相続権はないのですが、遺言で指定する事によって、
相続人以外の第三者に財産を相続させることができます。
これを、遺贈(いぞう)といいます。


そして数年後、のび助は死亡しましたが、
不幸なことに、遺言書は所在がわからず、発見されませんでした。
当然、玉子とのび太はマイホームは自分達が相続したものだと思い、
法定相続の通り、玉子とのび太の共有名義とする、
相続による登記名義変更手続きを済ませました。

そして、名義変更手続きが済んだ後、
玉子とのび太はマイホームをジャイアンに売り、
自分達は都心の高層マンションへ引っ越してしまいました。
こうしてマイホームの登記名義は、
売買を原因としてジャイアンの名義になりました。

ところが後日、ドラえもんは、四次元ポケットの奥に、
生前のび助から預かっていた封筒があったのを思い出し、
取り出してみると、「遺言書」と書かれています。

開封してみると、
のび太たちがジャイアンに売ってしまったマイホームは
自分にくれると書いてあるではありませんか!

ドラえもんは、急いでジャイアンに抗議しました。

ドラえもん「ジャイアン!この家は、のび太のパパが遺言で僕にくれたものだから返しておくれよ」
ジャイアン「なにおう!俺はちゃんと代金も支払ったし、名義ももう俺になっているぜ」

さて、ジャイアンは、ドラえもんに建物を返さなければいけないのでしょうか?



このように、遺言によって遺贈を受けた人(受遺者)と、
そうとは知らずに相続人から譲り受けた人と、
不動産の所有者であることを主張できるのはどちらかという争いになった場合、
以下のような判例があります。

※読み飛ばしてかまいません。―――――――――――――――――
■判例■  特定遺贈と対抗要件(最判昭和39年3月6日 民集18巻3号437頁)
「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても、その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず、所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ(当裁判所昭和三一年(オ)一〇二二号、同三三年一〇月一四日第三小法廷判決、集一二巻一四号三一一一頁参照)、遺贈は遺言によつて受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず、遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが、意思表示によつて物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから、遺贈が効力を生じた場合においても、遺贈を
原因とする所有権移転登記のなされない間は、完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして、民法一七七条が広く物権の得喪変更について登記をもつて対抗要件としているところから見れば、遺贈をもつてその例外とする理由はないから、遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもつて物権変動の対抗要件とするものと解すべきである。」
――――――――――――――――――――――――――――――――

まとめると、
遺贈も意思表示によって効力が生じる点が贈与と異なるところはないので、
民法の原則通り、不動産物権変動の対抗要件は登記ということになります。
つまり遺贈を原因とする所有権移転の登記をして、
自分の名義に変更を済ませていなければ、
不動産の二重譲渡と同じく、登記なくして第三者に対抗することはできません。
先に自分名義の登記をしたほうが勝ち、ということです。

この場合、ドラえもんは、ジャイアンに対して自分が真の所有者であることを
主張する事は残念ながら、できません。


ところがここで、もう一度、

(民法1013条)
遺言執行者がある場合には、相続人は、
相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。


という条文を見てみましょう。

もし、のび助が残した遺言に、遺言執行者が指定されていたら、
玉子とのび太がした処分行為は、絶対的に無効です。
転得者であるジャイアンも、無権利者となってしまいます。

判例は、遺言執行者がいるのに相続人がそれに反して
第三者に処分行為(売買、贈与、抵当権設定など)を行った場合、
受遺者は登記なくして第三者に対抗できる、としています。


※読み飛ばしてかまいません。―――――――――――――――――
■判例■ 遺言執行者がいる場合の処分 (最判昭和62年4月23日 民集41巻3号474頁)
 民法1012条1項が「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し、また、同法1013条が「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているのは、遺言者の意思を尊重すべきものとし、遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであり、右のような法の趣旨からすると、相続人が、同法1013条の規定に違反して、遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても、相続人の右処分行為は無効であり、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして右処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当である。そして、前示のような法の趣旨に照らすと、同条にいう「遺言執行者がある場合」とは、遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含むものと解するのが相当であるから、相続人による処分行為が遺言執行者として指定された者の就職の承諾前にされた場合であつても、右行為はその効力を生ずるに由ないものというべきである。
――――――――――――――――――――――――――――――


この判例にしたがうと、
ドラえもんはジャイアンから建物を返してくれと主張できてしまうのです。

しかもこの判例は、「遺言執行者がある場合」とは、
遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含むとし、
相続人による処分行為が遺言執行者として指定された者の
就職の承諾前にされた場合であっても、絶対的に無効だとしています。

はたと思いました。
これって、不動産取引の場においては、とても怖いことだと思いませんか?

私も何度か仕事で、
親から相続した不動産を売るという取引に立ち会っていますが、
決済がおわり売買代金も支払い登記も済ませて、
数年後に遺言執行者つきの遺言書が発見されたら、大変なことです・・・・。
仲介不動産業者さんも、住宅ローンを融資した銀行も、登記した司法書士も、
誰も責任がとれませんよね。


もちろん、そもそも相続人名義で相続登記手続きをする際に、
遺言書の有無を司法書士がよく確認しているとは思います。

しかし、公証役場に問い合わせれば有無を確認してもらえる公正証書遺言と違い、
本人の管理にゆだねられる自筆の遺言書を遺品の中から発見するのは、
至難のわざです。
遺言書を書いたから自分が死んだら開けてくれと、
家族に託しているケースもありますが、
家族にも内緒で遺言をしていた場合、発見されない確率が高いでしょう。


このような不動産を買った第三者の対抗手段としては、
善意無過失などの条件を満たしていれば10年間の占有で時効取得したと主張する以外にないのでしょうか。

大変考えさせられてしまった研修でした。



ちなみに例の中で、
ドラえもんが四次元ポケットからとりだした遺言書を自分で開封していますが、
公正証書以外の遺言書は、家庭裁判所での検認手続によって
開封しなければならず、勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられます。

遺言書を発見された方は、くれぐれもご注意を。



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  • 2012.02/07 20:54分 
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プロフィール

司法書士 有本親子

Author:司法書士 有本親子
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(ろうきんの目の前のマンション1階です。)
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横須賀中央駅東口より徒歩5分
土日祝日も営業いたしております。


【経歴】
昭和58年新潟県の田舎で生まれる。
平成16年、18歳で神奈川に上京。
平成19年司法書士試験合格。
平成21年行政書士試験合格。
平成22年3月8日司法書士・行政書士事務所しらゆきリーガルフロンティアを開設しました。

【わたくしごと】
特技:折り紙
好きなこと:寝ること、食べること、読書と手紙を書くこと
苦手なこと:水泳と徹夜
行ってみたい場所:猿島、日光
好きな食べ物:からすみ、ピータン、あんきも、萩の月
嫌いな食べ物:ホヤ貝
好きな飲み物:お酒
嫌いな飲み物:甘酒
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